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再生事例 赤字原因となっていた大手通販会社との取引をやめ回復した事例

企業データ

F社 資本金:1000万円 年商:5億円 社員数:15名 業種:アパレル販売業

状況:原価管理ができておらず大手通販会社の言いなり

原因: 商品企画を大手通販会社が気に入り取引拡大。 しかし納期、単価、返品などの条件が大手通販会社から言われるままで赤字が拡大。

中国の提携工場の管理もできずB品の在庫ばかり増加し資金繰りひっ迫状態になった。

当社は、アイデアマンの創業者が特許を取り健康グッズの販売を行っていたが、大手通販会社との取引を期に一気に年商が拡大した。

しかし取引条件が大手通販会社に有利であり、儲けが出なくなっていった。 大手通信会社との取引開始当初はメインバンクが増加運転資金を融資することでどんどん売り上げを拡大していた。

しかし銀行融資によって資金が潤沢にあることで、「受注するたびに赤字」になっていることがわからず借入金額はどんどん膨らんでいった。

粉飾決算も行い3億円近く融資を受けた段階で、メインバンクが融資をストップ。 月々の銀行返済すらできずリスケジュール実行した。

◆相談時に示した再生方法

粉飾決算のすべてを開示する銀行返済のリスケジュール原価管理の徹底遊休不動産の売却大手通販会社との取引減少、新取引先の発掘

◆ご相談から再生まで

ご相談資金繰り、損益状況把握簡易改善計画作成、リスケ実行【ここまで3ヶ月】原価管理システムの再構築役員会議、幹部会議で月次計数把握【ここまで8ヶ月】大手通販会社との取引減少【ここまで18ヶ月】単年黒字化の達成【ここまで30ヶ月】月々の銀行返済の開始【ここまで36ヶ月】

1.原価管理ができておらず、粉飾決算による銀行借入

相談当初は追加融資を受けたい、方法はないか?というものであった。

年商規模に対して銀行借入は過大であり仮に融資を受けられたとしても、毎月の返済に使うと数か月で資金が底をつく状況だった。

今まで「資金繰りが苦しくなると銀行に借りる」ことで乗り越えてきたため、「なぜお金が残らないのか?」を深く考えることをしてこなかった。

決算書や見積書を分析したところ原因は「原価管理」にあった。 というより原価管理はしていない状況だった。

大手通販会社が製品仕様を変えてくるのでそれに対応しなければならない。 当社がいろいろ言える立場にないとのことだった。 大手通販会社との取引は受注数も多く一回の注文で数千万円となるため、3か月後の手形決済などのめどがつくため、この時点ですぐさま「赤字受注は切る」こともできなかった。

また銀行に対して粉飾決算書を提示して借入を行っているが、会社が倒産すれば融資が焦げ付き銀行も困るハズと、粉飾による借入を正当化するようになっていた。

2.資金繰りを改善するためにリスケジュール

資金繰りはひっ迫するが、やはり新たな借入を起こすことができず「借入による問題先送り」をやめ「借入せずにお金が残るような体質にする」ことに目標を定めた。

当然、粉飾決算の開示をしなくては損益と銀行返済のつじつまが合わず、メインバンクに説明することとなった。 同時にリスケジュールを申し込み、経営改善計画を提出することで判断をしてもらうことにした。

粉飾決算を開示すると、数千万円の実態債務超過となっており、再生計画を作成するにも10年以内での債務超過解消は困難であった。

アクションプランの大きな柱は①原価管理体制をしっかり作ること②大手通販会社との取引を減少させていくこと、とした。

大手通販会社に対する売上が半分を占めていた為、銀行は難色を示したが「赤字受注」を改善するためには取引条件を変えてもらわなくてはならない。

そうなると競合他社に負けることになるので必然的に売上は減少するであろうとの予測を立て、その代わりに大手通販会社向けであった企画商品を、売上割合が下位の得意先にも積極的にアピールすることで保管していく計画を立てた。

できた計画は社長自ら銀行、税務署、取引業者へ説明し承諾を取っていった。

3.原価管理システムの構築

原価管理を今まで行っておらず、極端な言い方をすれば、取引業者から請求書が来たら、手元にあるお金で払う、足りなくなったら銀行から借りる。 という状況であったため、どの商品に対して何を仕入れたのか?から把握する必要があった。

把握のために担当者にヒアリングすると… 「必要に応じて(勝手に)材料発注した」「納期が間に合わないため中国から飛行機便で納品した」と説明は一見正しいようにも思えた。

しかし、納期遅延を未然に防ぐ方策はなかったのか? 製品が出来上がるまでの業務フロー、チェックポイントは誰がどのように管理するのか? などを一つ一つ決める必要があった。

中小企業では数百万円の自社専用システムを入れようとするが、運用できていない事例がとても多い。 それはパソコンにシステムを入れたら何とかなる、楽になるということばかりが先行し、誰がどのように運用するかまで決められておらず、既存のやり方が楽だから新しいシステムを利用しないことで宝の持ち腐れとなっている。

業務フローに関しても、なんとなく今までそうやってきたから同じようにやっている事例が多く、チェックポイントをきちんと決めスケジュール管理まで行うことが必要となってくる。

しかし「改善=業務量(例えば所属長の確認業務など)の増加する」部分も多くあり既存のやり方を変えることを嫌う古参社員に理解してもらうことが改善する上での重要なポイントとなる。

4.大手通販会社との取引減少

大手通販会社との取引減少させるのはとても困難であった。 単価アップをお願いした時点で大手側から取引停止するぞ、現在発注分までキャンセルするぞ、と脅され下請法違反のような仕打ちを受けそうになったため、1年間で関係を壊すことなく単価が極端に低い赤字受注を減少させ、当社側でも原価を下げる努力を行い収益改善することを申し入れた。

この時、社長の中では「大手側からの取引停止通達があったとしても受け入れる。周りに迷惑をかけるが、再び自分のアイデアでいい商品を提供する。」との覚悟がありました。

何度も折衝を続けることで、半年間は今まで同様の条件で取引する、その後は単価アップするが受注数は減少することで合意しました。

毎シーズンの定期ものアイテムをベースに取引減少へと向かうことになったのです。 当然、売上減少となるので他の得意先、新規取引先などへの営業強化していきました。

結果が出るのはしばらく時間がかかるのですが、特許を取った製品を中心にプッシュする製品も絞り込みを行いました。 その結果、徐々にですが資金繰りが改善し、社長もお金の悩みから解放されるようになっていきました。

5.単年度黒字の達成

毎月の会議で売上、原価、利益を幹部社員と共有し、業務フローでの問題点を一つ一つ改善することで社員の意識が変わっていきました。

以前は「言われたことを嫌だけどやる」というスタンスであったのが、「働いた結果どれだけ儲かったのか?どうすれば効率よく作業できるのか?」を自律的に考えることができるようになり、 社長がいちいち細かく指示を出さなくてもある程度は①問題発見②問題解決法を考える③実践して再検証する、という流れになってきました。

その中で既存のやり方をやめない社員や批判ばかりで改善を実行しようとしない社員は自ら会社を去っていくこともありました。

中小企業なので社員が辞めたからと言ってすぐ補充できないこともあり、 さらに少人数で効率よく仕事をするにはどうするかを考えざるを得ない状況になるのですが、自律的に考える社員が増えていたことで効率化を達成し、結果として人件費が減少することにつながっていったのです。

関与して3回目の決算でわずかではあるが「単年黒字」を達成することができました。

その半年後には銀行返済も増額し、現在は新たな得意先に対し売り上げを増加せせることと、原価管理の徹底を行い二度と赤字企業に戻らないよう日々改善しています。

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