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再生事例 粉飾決算が発覚したが銀行協力を得て再生

企業データ

A社 資本金:1000万円 年商:5億円 社員数:25名 業種:工作機器販売業 状況:粉飾決算による借入過多で返済できない。 原因:リーマンショック後の販売不振により売上高減少に加え、追加融資を断られたことによる資金ショート。

当社は、社歴も長く地元にしっかりと根付いた商売をしていた。 顧客の買替需要をこまめに取り込むことで過去からの得意先の売上割合が80%を超える安定した収益基盤を持っていた。

しかし、得意先の廃業や事業規模縮小などの影響で、買替え期間が徐々に長くなり売上減少し始めていたところにリーマンショックが重なり7億円の売上が5億円を切る水準まで落ち込んでいた。

弊社へ相談に来られる直近1年間で、既存借入の借換え分も含め3銀行から1億円近く融資を受けていた。毎月返済額は@500万円/月を超え3か月後には資金ショートするため相談へ来られた。

◆相談時に示した再生方法

粉飾決算のすべてを開示する銀行返済のリスケジュール経理システムの再構築会議による社員の月次計数理解売上増加、社内体制再構築

◆ご相談から再生まで

ご相談資金繰り、損益状況把握簡易改善計画作成、リスケ実行【ここまで1ヶ月】保証協会の下でバンクミーティングによる計画案承認経理システムの再構築役員会議、幹部会議で月次計数把握【ここまで6ヶ月】半年ごとのバンクミーティング(実績報告会議)単年黒字化の達成【ここまで18ヶ月】月々の銀行返済金額の増加【ここまで24ヶ月】新規部門立ち上げによる売上増加【ここまで42ヶ月】

1.粉飾決算による銀行借入と使途不明金

最初は専務が相談に来られたのですが、粉飾決算による銀行借入が保証協会に発覚したことを、どこまでコンサルタントに開示して良いものなのか悩んでおられました。

しかし、すべてを開示していただかない限り再生への正しい解決策は考えることができないことをお伝えしたところ、数日後には社長と専務で改めて相談に来られました。

弊社に相談されるクライアントは8割程度粉飾をしています。粉飾内容や程度は様々なのですが、発覚せずここまで銀行融資を引っ張れたな、と驚かされるものもあります。

当社に関しても6冊の粉飾決算書があるだけでなく、使途不明になっている資金流出先の一部が「影のオーナー」という会社設立当初に資金を出してくれた方への経理処理をされていない配当金のようなものでした。

もちろんリーマンショックの売上減少が資金ひっ迫の大きな原因でもあるのですが、「会社の資金を個人的に引き出して使う」ことがまかり通っていた企業文化が大問題でした。

メインバンクとの3社協議の時、その内容を説明し、影のオーナーに一部を弁済させるとともに現役員が不足分を補うということで改善計画案に同意してもらいました。

細かい交渉内容はお伝えできませんが、使途不明金に至った原因と改善策、収支改善した場合の返済計画とアクションプランを、根気よく銀行、保証協会へ伝えに行きました。

数回行われたバンクミーティングではメインバンク以外の銀行へ、社長の口から経営改善計画の説明と実行する意志を話してもらい、どうにか全行同意を取り付けることができたのです。

2.資金繰り改善はここからスタート

バンクミーティングでリスケジュール全行同意を取り付けたところで新たにお金が入ってくるわけではありません。 事業で儲けない限り会社存続すら危ういことには変わりがないのです。

そこで在庫処分による資金回収をしようと在庫一覧を見せていただいたのですが、半年前から更新がない状態。 大きく在庫内容が変わっているわけではないという説明で現場に確認すると、機械の稼働可能状態がわからない在庫、型番がわからない在庫、すでに販売しているにもかかわらず一覧に残っている在庫…。

在庫内容は大きく変わっていました。前任者が半年に一度の一覧更新しかしていなかったのでそのままやっていたらしい。

会社の重要な指標は一元化されて経理システムに組み込まれるべきだということを説明し、現場で集計、経理で管理という体制を構築しました。 資金繰りを改善するために販売するので、ある程度のディスカウントもやむを得ない緊急の策であることを得意先にも理解してもらいどうにか急場をしのぐことができたのです。

また社員給与も業務内容や能力に関係なく高い社員、低い社員がいたため不満の温床になっていました。 役員報酬を2割削減するということ、会社の窮状を理解してもらうことで、社歴が長いから給与が不当に高いという社員には減額を承諾してもらいました。

しかし営業マンからは在庫たたき売りが与えるイメージ悪化や、整備部からはこまめなメンテナンス業務、在庫管理など仕事が増えることに不満が噴出しました。

ここで重要であったことは、社長含め役員全員が、今までの経営や企業文化を反省し良い会社へ変わりたいことを全社員に伝え理解を得たことだと思います。

3.経理システムの構築

経理システムというと経理部だけの仕事のようですが、そうではなく「社内の数字」が経理システムに集まってくることを指します。 集まってきた数字を経理部が加工し「会社運営に重要な数字=指標」を作りこれを会議で共有、議論するシステムのことです。

上記の話では、在庫がタイムリーにわからないため再度発注している、修繕部品を整備部が必要に応じて勝手に購入するなど、管理が一元化されていないためにムダな出費が多かったということです。

また営業日報、作業日報で経費管理や原価管理を行い、日報で行動の見える化をすることで上司が的確な指示を出せるようにしました 「社内の数字」というと経理部が扱うお金ばかりに注目されるが、作業量、作業時間、報告回数、ロス回数といった仕事をすれば必ず数字に変換できるものである。 こういった数字は経理部が集めに現場に行くのではなく、担当部署ごとに必要な数字を考えまとめてから経理部へ渡してもらうようにしました。

当然、経理部は月次試算表作成、日繰り表作成も行ってもらいました。 月次試算表は社内入力していたので変動費、固定費の科目変更、経費の細分化など「社内の数字」が細かく見るようにしてもらったのです。

ここで日繰り表作成に関して言われたのですが、「先のことはわからない、なので作れない」…。 確かにわからない部分もあるが、定期的に支払う電気代、リース代といったわかるところから埋めてもらい、業者支払いで請求書が来ていないところは発注した担当者に確認してもらいました。

はじめは経理部員で聞きに現場へ行ってもらったので経理部から激しく抵抗がありました。 業務量が増えすぎるということです。だから担当部署でまとめてもらって必要な数字だけを経理に集めてもらえるようにしました。 担当部署の上司はまとめるのが大変に感じ、発注決済を経理部も確認させるようにし、締め日にいちいち数字をまとめなくてもいい流れに変えていきました。

これが経理システムの構築です。 当たり前のことを当たり前に集計するようになったため各部署の「どんぶり勘定」がなくなり、経理部に集まる「社内の数字」を使って幹部が判断できる状態になったため会社全体の「どんぶり勘定」がなくなったのです。

4.単年度黒字の達成

黒字化するまでの1年半は社長から平社員までとても苦労をしてもらいました。 それでも社員があきらめずについてきてくれたのは社長が「いい会社に変えたい」と想い続けたからだと思います。

コンサルティング開始当時、売上は5億を切っていましたが、1年半たった時点で年商6億円を超えるペースになってきていたのです。 20年近く前は10億円を超えていた時期もあり当時を知っている社員からは、「当然計画達成できる、まだまだできる」と勇ましかったです。 ちなみに改善計画書では売上は横ばい(5億円で数年は推移する)としていたのです。

原価率も開始当時は93%を超えていたのが84%を切る水準まで減ってきました。 売上金額も原価率もだいぶ良くなっており、それもあってか会議でも社員がよく発言するようになってきていました。 企業文化が変わってきていたのです。

そういったこともあり計画2年目の決算で黒字化達成できたのです。 粉飾決算の開示は銀行、税務署すべてに行っているので繰越欠損金が部分的に認められないこともあり黒字=納税になりました。

その後のバンクミーティングでは好決算であったこともあり毎月返済金額を計画通り増加させ、余剰部分は社内留保に回すこととなりました。 そうはいっても再生スタート時は毎月残高がゼロ円に近い状態でしたので、やっと月商の1/3程度の1千数百万円が残る程度でした。

ちなみにこの年の秋に数年ぶりの社員旅行へ全社員で行かれました。 東京を満喫してきたらしくブログの写真では普段見ない笑顔でした。

5. 新規部門立ち上げ

毎月開催される定期会議の中で、収益の柱を増やすため中古機械買取下取部門を立上げ積極的に新規顧客獲得することが決まり新人育成も含めたプロジェクトを進めています。

しかしリスケジュール中なので新規融資が出る状態ではないため買取下取資金は月々の資金繰りの中で行っています。

新規事業を立ち上げるには資金的に苦しく手枷足枷がはめられている状態ではあるのですが、そこはこの改善期間に培われた社員同士のコミュニケーションで策を出すことで乗り切っています。

そうはいっても業績次第ではリスケジュール中でも保証協会の別枠融資もあるので、融資対象の事業として認められるよう努力し、銀行への定期報告も行うようにしています。

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