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再生事例 弁護士にも破産を勧められるも現在は新ショールーム出店

企業データ

B社 資本金:1000万円 年商:1.5億円 社員数:10名 業種:リフォーム業 状況:粉飾決算と個人所有不動産を担保に入れて借入過多。

原因: リーマンショック後の販売不振と競合会社の増加による売上高減少。社長の病気。 当社は、先々代が運送業を創業し、先代社長がバブル期に業種変更した会社で、所有する不動産もいくつかあった。

リーマンショック後に消費マインドが減少するとともに、大手・中小の競合が増え見積もり段階で他社に負けることが多くなった。 新しいエリアに進出するため個人所有不動産を担保に入れ銀行借入で不動産を取得し本社機能を移転させたが、それを維持するだけの売上が得られずいた。

運転資金を借入れるために次々に個人所有不動産を担保に入れるが、業績は回復せず粉飾決算による借入を始めた。

毎月の銀行返済ができなくなるまで資金繰りが枯渇し弁護士に相談に行ったところ「破産」を勧められた。 この時点で社長の身体は病いに侵されており通常業務を行うのにも支障をきたし始めていた。

◆相談時に示した再生方法

相談時に示した再生方法社長の体で再生できるか、意志はあるかの確認粉飾決算のすべてを開示する銀行返済のリスケジュール業務フローの再構築会議による業務進捗管理と社員の月次計数理解

◆ご相談から再生まで

ご相談資金繰り、損益状況把握簡易改善計画作成、リスケ実行【ここまで1ヶ月】税金、社会保険料、買掛金の分納交渉同行経理システムの再構築会議で月次計数把握【ここまで6ヶ月】死去による社長交代単年黒字化の達成【ここまで24ヶ月】月々の銀行返済金額の増加 【ここまで36ヶ月】新ショールーム開設による売上増加【ここまで48ヶ月】

1.リーマンショック後の売上減少と社長の体調不良

社長が相談に来られた時、弟(専務)と二人で来られたのでですが体調がよくない状態でした。 社長は相談時40代後半でしたが30歳前後にはガンを患ったことがあり、再発の可能性がある状態でした。

相談直前にも保証協会付きで1000万円融資を受けていたのですが、未払金の支払ですでに手元にはなく、弊社へ相談に来られると同時に弁護士へも破産手続きについて相談に行かれていました。

弁護士の回答は「破産」しかない。ほんとにそうなのかを確認したいと率直に問われました。 この段階では当然リスケジュールすら行っておらず、未払金の支払もしつこく請求してくる先からあるお金を払うといった場当たり的な行動でした。

未払いにより業者から取引停止となれば業務が続けられないため、未払金返済の優先順位を決め、いざとなったら代わりの業者は取引可能か?を細かく検討した結果、現在の受注分も含め3,4か月は資金繰りが回ることがわかりました。

しかしこれは借入したばかりの保証協会付き融資すら全額リスケジュールすることが大前提でした。 社長は一度会社へ戻られて専務や家族と再度会議され、次の日に改めて連絡がありました。

「いまここで破産すると家族の住む家すらも無くなり、大学へ進学している子供の学費も払えない。当然、社員、取引先に大きな迷惑をかけてしまう。自身の身体はいつまで持つかわからないが、会社を続けられる可能性が1%でもあるならそれにかけてみたい」とのことでした。 専務も一緒にやりきる覚悟ができていたので、その場で大まかな資金繰り表を作り、優先的に返済する業者に対し、いついくら支払うかを連絡していきました。

専務には新規受注獲得のためインターネット集客を進めてもらうとともに、大手ハウスメーカーの下請け営業を強化していきました。

2.リスケジュールと業者の予想外の行動

簡易な経営改善3年計画を作成し、粉飾の開示とリスケジュールをお願いするため銀行へ報告に行きました。 支店長面談時に「そうした方がいい、まだ事業はやり直せると思うので頑張ってほしい」と言われたとき社長は再生に対し意志をさらに強くされていました。

毎月、もしくは適時の受注報告、資金繰り報告、試算表提出、改善プランの進捗状況を細かく銀行へ報告することなり、月次試算表すら作成してこなかったため提出できる経理システムを作ることが必要になりました。

また未納分がある税務署、社会保険事務所へも何度も訪問し、12ヶ月分割納付を認める代わりに毎月現状報告へ行くという条件で承認してもらいました。

しかし業者の交渉は困難を極めました。 月末に支払ってもらわなければウチが資金ショートする、来月からは現金取引しか応じないなどいろいろな問題が発生したのです。 それでも社長と専務は現状の説明と分割支払い、今後の取引継続をお願いして回りました。

小さな町なのですでに当社が倒産しそうという情報は広まっています。 取引停止を通知された業者もあり、社員にも直接問い合わせが増え退職者が出るのではないか、そのせいで施工ができないのではないかという不安も出てきました。

そんな時、先代から取引のある地元でも有力な中堅業者が「必ず再生をすること」を条件に数百万円の未払いはある時払いでいい、しかも今まで通り取引は続ける、担保は「先代より今まで儲けさせてもらった事実」ということでした。 この中堅業者が味方になってくれることで業界内の不安は小さくなり当面の業務行うことができるようになりました。

私も先方へ同行していましたが、当社社長の「どうしても仕事をさせてほしい、継続させてほしい、今までの失敗をもとにやり直しさせてほしい」、恥も外聞も捨て自分の言葉で話されたことに衝撃を受けたことを覚えています。

それくらい覚悟が決まっていたのだと思います。

3.経理システムの構築と会議

いい話で終わってしまいそうですが再生はスタートしたばかりです。 月次試算表、資金繰り表は無く、請求一覧と入金一覧を交互に見て振込作業に行くといったどんぶり勘定でした。 資金繰り安定時には、まず日繰り表を作ることが必要で3ヶ月先まで作成してもらいました。

ここでも「先のことはわからない」という理由で金額の空欄が多くなります。 受注数や工事進捗状況でどれくらい請求されるか予想できるはずですが、現場で発注してしまっているので経理では全く把握できない、余分に発注したものは倉庫に置いとけばいいとキチンと管理すらできていない。 在庫を把握できていないので二重発注も多い状況です。

資金繰りひっ迫する会社は大なり小なり把握できていないことが多く、一つ一つ表を作り「見える化」するだけで無駄が発見できることに驚きます。社員の給料が上がらない、ボーナスが出ないのは自分たちが無駄金を倉庫に押し込んでいることが見えるからです。

社員全員が月次試算表を解読できる必要はありませんが、自分たちが把握・管理する数字は日々集計の積み重ねで理解しなくてはなりません。 簡単なことですが、今までやってなかったことなのでめんどくさいので社員の抵抗は少なからずありました。

そこも社長と専務が先頭に立って「過去と同じように行動したら、同じ結果しか出ない」ことをずっと言い続けていました。

月次試算表に関しては、一年に一度、請求書、レシート、受注表、通帳などを税理士事務所へ丸投げし決算書を作ることをやめ、社長の奥様が会社内で会計ソフトを入力することにしました。 今まで簡単な請求作業や振込み業務くらいしか経験がなかったのですが、イチから会計ソフトの入力方法を覚え試算表を作るまでになり、お金の流れがはっきりわかるようになってくると、資金繰り表作成も精度が上がってきました。

経理資料が整ってくると会議をする意味が出てきました。 今までは「最近どう?なにか問題ある?あの工事どこまで進んでいる?」といった内容だったものが、「あの案件でこの材料を発注した。進捗が遅れているので人を回してほしい。外注に頼んでも利益が出るか」に変化してきました。

すべての固定費(給与など)見せないが営業利益までを毎月発表することで現在の自社の利益は計画に対しどの位置にあるのかを繰り返し理解してもらいました。

4.社長の死

社内の数字が見えるようになってくると「漠然とした不安」が減少してきます。 受注が今のままでは来月資金繰りが厳しくなる、という事実がハッキリすると、お金が無いことは変わらないのですが、受注に向けての営業活動や、業者発注を〆日をまたいでから行うといった行動をとれます。

仕事とは現状把握がとても大切だと理解できたころに社長の体調が悪化してきました。 自身の身体なので健康状態はしっかり把握されていました。入退院を繰り返し、業務にほとんど携わることができなくなってきてもなお「会社の現状」を把握するため資料を確認し改善点を指示していました。

しかし激しい闘病生活の末、再生の道半ばでこの世を去ってしまいました。

「やれることは全部やる覚悟」これは自身の身体の治療に関してもそうだったのですが、会社の再生に対しても同じように取り組んでいましたし、その姿を見背続けたからこそ専務、社員、取引先を巻き込んだ再生を進めることができたのだと思います。

その後は専務が会社を継ぎ代表取締役社長として活躍しています。

5.計画対比と単年度黒字の達成

常に数字で把握する、確認するという姿勢はすぐ全社員には広がりませんでした。 現場社員は目の前の作業を進めることが大切で、数字にかまってられないのです。

しかしそれでは赤字から抜け出すことができません。 もうけをかみ砕いて伝える必要があります。 現場社員にとってわかりやすいのは「自分の給料という数字」です。

原価管理に労務費として組み込んであるので、自身の作業日報から案件ごとの収支を出すと「給与をもらいすぎているのか、自分のミスによって費やされた追加材料費が無い場合もっと利益が出たのか、その分手取りが増えたのではないのか、もっと効率よく案件をこなしたら一年間で残る金額が増えるんじゃないか」といったことに気づいてきます。

職人気質の社員が多いのでトントンと理解はしてもらえなかったのですが、はじめは改善すればボーナスが増える!ということを強調して伝え続けてきました。

ここで重要になったのが計画との差を認識することでした。 目の前の利益額はわかったが、会社が良くなるために作った改善計画に沿っているのかどうか、独りよがりで今月の利益はいくら出た!と喜んでいないかを振り返りました。

よく経営は航海にたとえられるが「海図(再生した先にあるゴールを示す計画)」を見ずに大海原に出る人はいない。 「現在の位置(月次試算表、実績利益額)」を把握せずに帆を上げて風任せで進む船はいない。 「ズレ(計画との差異)」を発見したら修正しなければならない。

こういったことで現場社員も徐々に計画との差はなぜ起きているのか、明日からどう行動すればいいのかを理解してきました。

そうして2年経ち、わずかに単年黒字決算となりました。 資金繰りも月末に月商の1/3程度が残っている状況なので決して潤沢なわけではないが、亡くなった先代社長が進めた再生が決算として形になりました。

社員といくつかの業者で花見に行き先代社長に報告とみんなの笑顔を届けることができたと思います。

6.新ショールーム立上げ

資金繰りが安定してくると再生ではなく次の投資をしたいという意見が出てきました。 現在の本社の片隅でお客様と打合せするのではなく、資材サンプルや物件写真などを展示したスペースを作りたい、それをもとにホームページと雑誌広告展開をしたいとの要望が上がりました。

しかしリスケジュール中なので追加借入はできません。 逆に改装工事費にお金をかけるのならもっと多く返済してほしいといわれました。

借入れはあきらめ自社の資金繰りで出せる範囲まででやる、施工は社員で終業後や休日に行うことにしてアイデアを出し合って進めてきました。

経理部のすぐ横で現場社員が施工を行うことで、現場のことを全く理解しておらず溝ができがちだった社員間の絆も深まりお互いに協力することが増えたこともメリットだったように思います。

新ショールームによって少し新規客が15%程度増加しており、閑散期というものが無くなってきました。 個人顧客受注比率を上げてきているので、大手ハウスメーカーの受注動向に左右されにくくなってきたのです。

先代社長が想い描いていたゴールにはまだ到達していませんが、現在も社員と取引先一丸となって経営を進めておられます。

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