再生事例 店舗閉鎖による赤字減少と派生ビジネスによる回復

企業データ

E社 資本金:1000万円 年商:4億円 社員数:20名 業種:アパレル

状況: 婦人アパレルで大手流通から出店依頼もあり拡大していたが6店舗目を出店するあたりから店舗管理ができず、どんぶり勘定になり赤字を粉飾決算&銀行借入で賄っていた。

原因:屋台や催事といった行商から始めて30年、特色のある婦人服で人気がでて大手流通や商業ビル開発業者からの出店依頼もあった。 6店舗目を出店したあたりから各店舗の売り上げ管理、労務管理、在庫管理などができなくなり、月末決済資金ショートが予測されたが銀行借入ができなくなった時点で相談に来られた。

当社は行商を行っていた時からすると30年近く商売をしているが年商5億を超えるに至ったのは最近10年程度。 妻がずっと経理をしており、お金の流れは把握できているが、利益を管理することはできておらず、どんぶり勘定となっていた。

粉飾決算で銀行借入を行っており総額3億円を超えるほどになっていた。

消費の多様化と消費自体の低迷で売上が20%程度減少。大手流通の店舗は赤字だが契約期間満了するまで耐えることでしのごうとしていた。

そのため運転資金を銀行借入しようとしたが、計画と実績管理があまりにずさんであったために実行されず数か月後には資金ショートが予測されたため改善計画作成、リスケジュール後の改善アクションのサポートの為にコンサルティング契約を結んだ。

◆相談時に示した再生方法

赤字店舗の撤退粉飾決算開示と銀行返済のリスケジュール経理システムの再構築会議による社員の月次計数理解派生ビジネスの構築

◆ご相談から再生まで

ご相談資金繰り、損益状況把握簡易改善計画作成、会社借入のリスケ実行【ここまで1ヶ月】赤字店舗の撤退経理システムの再構築会議での月次計数把握【ここまで8ヶ月】単年黒字化の達成【ここまで20ヶ月】派生ビジネスの構築【ここまで24ヶ月】

1.強気の出店とどんぶり勘定

当社が相談に来られた時、銀行借入が断られた「不安」と、大手流通から出店要請のあるブランドに対する「自信」の二つが入れ替わり表情に現れていました。

中小企業の事業が拡大していく局面でよくあるシーンだと思います。 銀行もお金を貸すことで貸付利息を儲けるのになぜ貸さないんだ!と怒る社長もいます。

確かにそれも正しいと思うのですが、そもそも元金返済できるかどうかわからない会社にお金を貸す銀行はありません。 今までの販売実績が担保・保証だと話す社長も多いのですが、それを決算書という形で記録し、経営計画という形で将来のストーリーを魅せなくてはなりません。

そういったものが無く「うちのブランドはまだまだやれるから貸してくれ」では借入できないことを説明しました。 そもそも粉飾決算で借入をしてきているので数字が大切ということは理解されていました。

数字=お金=儲けを振り返る必要があったので実態貸借対照表を作ると数千万円の債務超過でした。

経理を担当している奥様に在庫や資金不足の実態をヒアリングするとだいたい数千万円赤字で消えているという認識は持っていました。 日々お金を計算しているので肌感覚で赤字の現状を理解しているのですが「どうすればお金が残るのかわからない」状況だったのです。

2.リスケジュール要請と社長の責任

このままいくと資金ショートで倒産となります。

銀行借入ができないか再度交渉しましたが、なぜ今までの決算書の状況で、また資金が必要なのか? という合理的な説明ができないのでどの銀行も借入することはできませんでした。

この時点で社長はまだ強引な拡大路線を取ろうとしており、粉飾決算開示によるリスケジュール&赤字店舗撤退はしたくないとの考えでした。

奥様や役員と話し合いを続け、私も粉飾決算のまま借入をすることはできないと社長に伝え続けることで理解され経営のやり直しをすることとなりました。

粉飾決算を銀行へ開示する時、社長からはコンサルが説明に行くだけではダメかとお願いされたが、そんな弱腰では今までの責任を取り経営をやり直すように見えないため、すべて社長の口から謝罪と今後の再生への意志を語ってもらいました。

経営計画やアクションプランの説明はコンサルである私から説明しましたが、それ以外は積極的に社長に語ってもらうようにしました。

追加担保や手持ち資金の返済など細かい部分は交渉によるため、社長がこの時点で全ての責任を果たすことはできませんが、経営不振になった原因と将来の改善方法、ビジョンを説明することも責任の取り方の一つです。

3.赤字店舗撤退

改善計画書には赤字店舗の撤退も含まれているのでリストラも含めて必ず実施しなくてはなりません。

繁忙期などを勘案して計画作成するので撤退時期は資金回収が最大化する時ですが、たまに突発的に売り上げが増加すると撤退を躊躇したりします。

この社長もブランドに自信があるため来月は売上上がるのではないか、お客様に認知されて投資を回収できるのではないか…と根拠のない期待をしていました。

しかし、その繰返しで赤字を垂れ流ししてきたはずなので、明らかに今後も売上増加するという確証がない限りは撤退しなくてはなりません。 改善計画通り儲かったのならば5年後に再出店すべきだということを伝えました。

撤退時期を決めるにあたり気を付けることは、契約で違約金が発生する、繁忙期・閑散期、モールなどでは無人店舗にすることができないため人員配置と退職者の選定など、出店時とは真逆のマイナス条件の調整ばかりで精神的につらいものがありました。

ですが社長がもう一度経営者として再起をするためには避けて通れない業務なので夜遅くまで一緒に課題を検討していきました。

赤字店舗を2店舗閉鎖したことで資金流出は止まったが、残存店舗も収支トントンであり利益が残らないため在庫管理と商品発注の管理をスタートさせました。

4.経理システム構築と実績との差の把握

アパレル会社に限らず在庫管理システムを導入している会社は多いのですが、活用している会社は少ないのが現状です。 システム自体は数百万円しているのですが、請求書発行や法人向けの受注管理程度にしか利用していませんでした。

自社の業務フローを把握し、システムを入れることで何が効率化するか徹底的に検証せずに導入したので、システム会社の言いなりに改修費用を支払っていました。 またそのシステムをだれが入力しデータ検証するかといった担当者も決めていなかったため活用できていなかったのです。

資金繰りも安定していない段階でシステム担当者を決めて取組む余力がないので、在庫管理と請求書発行の機能だけに絞り、他はエクセルで対応することに決めました。

改善を進めるなかでシステムの活用は増えていったのですが、その過程で自社の業務フローを社員が認識するようになり、作業効率を考えた行動をとるようになってきました。

また月次試算表を翌月末までに作成し、計画と実績の差を把握できるよう新たな資料を作ることで会議の内容が変わってきました。

「今月は目標金額に届かず残念です。来月はもっと頑張ります」といった気持ちや感情のコメントだったのが、 「目標金額に対しいくら不足しました。原因はなになにで、来月はこのように改善します」と数字と行動を話す会議へと変わっていきました。

5.単年黒字化の達成と派生ビジネス

業務改善が進むにつれて「数字の見える化」が進み収益も上がってくるようになった。 店舗を閉鎖しているので売上金額は下がっているのだが、最終利益率がマイナス%から0.5%程度へと増加したのです。

4億円の0.5%なので2百万円だが、粉飾決算に慣れ切っていた社長にしてみたら「努力の結果」が黒字として現れたことに大変喜んでいました。

決算書の数字をごまかすのは簡単ですが、経営実態、赤字の事実をごまかすことはできないのです。

これに早く気づいて改善スタートさせることができるかが、倒産との分かれ道だと思います。

まだまだ元金返済を多くできる水準ではないのでリスケジュールは継続ですが、銀行といった債権者へ決算報告する姿勢も大きく変わったように思います。

派生ビジネスと言っても新規借入できる状態にはないので自己資金でできる範囲になりました。

自社にある財産は何か?を徹底して振り返ってもらい海外にある提携工場、販路を活用し、商社と共同企画の製品を海外販売することで、国内の景気変動に強い会社にしていこうという戦略です。

まだまだ規模は小さく、新たなビジネスにお金を投じることができないが、自分のアイデア企画を形にすることができると、社員のモチベーションが大きく上がってきています。

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